生産者インタビュー

甲州地どり生産組合代表理事であり、甲州地どりの生産者のひとりでいらっしゃる加藤政彦さんにお話しをうかがいます。

一般に流通している鶏肉(ブロイラー)と甲州地どりの最大の違いというと、どのようなところですか?


加藤:違いは多すぎて一言では説明できませんが、決定的な違いをひとつ挙げるとするならば、ブロイラーが早く効率的に育つように交配された品種であるのに対し、甲州地どりは美味しさを求めて交配・生育されている品種だということですね。甲州地どりは美味しいですよ。食べてもらえば違いはすぐわかる。その分、育てるには時間も手間もコストもかかる。商売向きではないですね(笑)。


時間と手間とコストといいますと?


加藤:ブロイラーだと生後だいたい50~60日で出荷されるところですが、甲州地どりはその倍の約120日かけて育てます。ブロイラーは、ヒヨコから3kg程度の鶏に育つまでに6kg程度の餌を食べる。甲州地どりは3kgまで育つのにおおよそ13.5kgの餌を食べます。


出荷までの時間も食べる餌の量も倍以上ですね!

生育環境にも違いがありますか?


加藤:私共の養鶏場では、170㎡ほどの鶏舎に500匹ずつ飼育しています。甲州地どりについては一坪に10羽以下の密度で育てると規定されているのです。ブロイラーの鶏舎は一坪に50羽程度飼育するのが普通だから、約1/5ですね。ずいぶん広々としていますよ。


鶏舎には鶏のための出入口があって、生後60日を過ぎた頃からは、屋外の運動場との間を自由に行き来できるようにしてやります。ブロイラーは出荷まで屋外に出ず鶏舎で過ごすから、そこも大きな違いでしょうね。


そうしてだいたい120日目に、500匹のうち450匹くらいが出荷されていきます。

加藤さんの養鶏場は、見渡す限り自然の野山に囲まれていますが、夜間も鶏舎の出入口を開けていらっしゃるのですか?


加藤:気温とか外敵の問題もあるので、最初のうちは閉めますね。朝行って開けてやると、喜んでバーっと外に飛び出していきますよ。

慣れてきたら夜も開けておきますね。好きなように外に出て、走り回ったり、小石や虫を啄んでいます。


山梨は夏と冬での寒暖差が大きい土地ですが、夏と冬で育て方に違いがありますか?


加藤:夏冬問わず、ヒヨコには、37度程度の環境を用意しています。人間が使うコタツをね、改造して、布団をかぶせて、寒かったら自由に入れるようにしておいてやるのです。


コタツ・・・・ですか!

鶏が自分の意思で鶏舎を出入りできたり、コタツにあたれたり(笑)、

なんだかとても自由な環境なのですね。

加藤:そうだね。言うこと聞けって言っても聞かないですからね(笑)。


先ほど、同じ鶏舎で育つ500匹のうち
出荷できるのは450匹程度とおっしゃいましたが、残りの50匹は?


加藤:生後60日頃までは鶏舎の出入口を閉めておくと言ったけれど、
それはね、やはり自然の中ですので、狸やら野生の外敵にやられてしま
うからなんです。生後60日頃になると自分で逃げ回れるくらいの体力が
つくから、自由に出られるようにするのですが、それでも中にはやられ
ちゃう鶏もおります。


また通常ブロイラーだと、生まれてから出荷される一週間前までずっと
抗生物質の入った餌を与えて育てるのですが、うちの地鶏には生後21日

以降、抗生物質の入っていない餌を与えていますので、中には運悪く病

気になるのもお りますし、環境になじめず大きく育たないのもおります。

自然に任せて 育てておりますので、仕方がないことです。



500匹のうち50匹が!

決して少なくない数字のように思われるのですが、それでも土の上で育てていらっしゃる点には、やはり大きな意味があるのでしょうか?


加藤:野生に近い状態で、土や小石を啄みながら育つことで、内臓がしっかり機能して健康的な体に育ちます。走り回れば、筋力がついて締まった体になります。

甲州地どりの砂肝を一度食べてみてください。普通の鶏の砂肝の数倍は大きいから、見ても砂肝だってわからないかもしれないけど。

餌に関してはいかがですか?


加藤:先ほども言ったように、通常ブロイラーは、出荷前の一週間を除いて、抗生物質の入りの飼料で育てられます。人間の口に入る際に薬が残留していないよう、最後の一週間だけは抗生物質の入っていない餌を与えるようにするのです。

甲州地どりは、生後21日間はヒヨコ用の飼料を、その後は植物など天然の素材を原料とした指定配合飼料(指定原料で配合された特別な餌)を与えます。国で定められたワクチンを投与する以外は、抗生物質を与えることはないし、投薬もしません。

それよりも病気をしないような環境で育てることを大切にしているからね。実際、病気で死ぬ鶏がいないわけではないですが、流行って困るようなことはありませんでしたね。


また、養鶏用の飼料は通常、早く体を大きくするために、原料に魚粉(動物性タンパク)を使用していることが多いのですが、甲州地どりの餌には魚粉は使っていません。魚粉は肉の“臭み”の素になると考えているので。

健康的な食生活と住環境が、美味しい地鶏を育てるということが、よくわかりました。

さて、甲州地どりは今でこそ山梨の新しい名産品として認知されていますが、ここまで来るまでに長い道のりがあったと伺っています。


加藤:甲州地どりの生産を始めて約25年になりますが、認知されてきたのはここ10年程度でしょうか。初めの15年間は「こんなに高い鶏肉が売れるわけがない」と言われ、商売どころではなかったです。

転機となったのは10数年前、地元甲府の料理屋さんが甲州地どりを扱ってくださることになった時です。そこで料理を食べたお客様方が「この鶏肉は何だ!」と話題にしてくださったことから、徐々に徐々に、口コミで噂が広がったようですね。

今では山梨をはじめ全国数十の飲食店で取り扱っていただいています。東京や神奈川など遠方から度々買いにいらっしゃる個人のお客様もいらっしゃいます。ありがたいことです。

遠方のお客様にも、当ホームページを通じて便利にご購入いただけるといいですね。

では最後に、ホームページをご覧の皆様にメッセージをお願いいたします。


加藤:地鶏と言えば、比内地鶏や名古屋コーチンが有名ですが、僕は甲州地どりが一番旨いと思います。地鶏としての歴史は浅いけれど、後発だからこそ、あらゆる工夫を凝らして美味しさを追求することができたと思っています。

とにかく、一度食べていただければ違いがわかると思います。どうぞお試しください。


加藤さん、ありがとうございました。